天然に

愛知県の自宅と長野県長和町を行ったり来たりの二拠点生活をしています。主に信州の風景、花、虫などの写真を載せたり、山での暮らしを書いています。

今年出会ったスミレたち

 今年の春もあちこち菫を見て回りずいぶん楽しませてもらいました。私の同定も少しはまともになってきたような気がするのでここらで一度整理してみようかと今年見ることの出来た菫を50音順に纏めてみました。

・アオイスミレ Viola hondoensis

 春一番初めに咲いてくれる菫なんだけど、花がきちんと開かないし花茎もシャキっと立たないのが残念。葉もちょっと味気ないかなぁ。

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 これは花茎が直立していること、越冬葉が無いこと、花が割と開いていることなどからもしかするとエゾアオイスミレかもしれません。

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・アカネスミレ V. phalacrocarpa

 周りがまだまだ冬色の時期に鮮やかな茜色の花を見せてくれてます。家の玄関付近にも自生しているこの花を見ると、あぁ春が来たなぁと思います。毛の多い葉はみずみずしい緑をしていて好きな菫です。

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・アケボノスミレ V. rossi

 同じ場所の他の菫がそろそろ終わるという頃に咲き出します。独特な色をした大きな花を咲かせるのですぐに判ります。花弁も丸くてとても豪華です。花時期の葉はちょっと投げやりな感じ。

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・イブキスミレ V. mirabilis subglabra

 他の菫より少し早めに咲くようです。タチツボスミレとは少し違う淡紫色の花を着けたものをよく見ます。花付きも良く型も崩れずにきちんと咲く好きな菫です。mirabilisという種小名は”びっくりした”とか”不思議な”というような意味合いと思っていたのでなぜこの花にこんな名前を付けたのかと思いましたが、本来有茎種なのに開花時は無茎であることが由来らしいです。葉はワサビのようです。

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・ウスバスミレ
 亜高山針葉樹林の苔むした林床で見かける菫。清楚な白い花は周りの雰囲気と良く似合っていてとても好きな菫です。亜高山帯を歩いていると葉は良く見つかりますが花を咲かせている株はかなり少ない気がします。地下茎で増える種は花への依存度が少ないのかな。

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・エイザンスミレ V. eizanensis
 葉が特徴的なので咲いていなくてもすぐに判別できるからかあちこちで見かけます。花は紅色からほとんど白まで変化があり大型でしっかりした丸い花弁で葉とのバランスも良く素晴らしい菫だと思います。

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・エゾノタチツボスミレ V. acuminata
 山地性の種と思います。伊吹山にもあるようですが私は長野県内でしか見たことがありません。花弁は薄紫のものと白いものが同じ場所で見つかります。

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・オトメスミレ V. grypoceras
f. purpurellocalcarata
 タチツボスミレの1品種で、白花で距のみ紅紫色が残ったものです。タチツボの盛期が過ぎ退色したような感じかなと思っていましたが、今春実物を見たらとても上品で美しい花でした。狭い範囲に数株咲いていました。

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キバナノコマノツメ V. biflora
黄色い菫の中では一番よく見かける花で、亜高山帯に行けば大抵目にすることができます。花付きも良く、見事に群生していることがあります。

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・ゲンジスミレ V. variegata
var. nipponica
 淡い桜色で形の良い花に丸い葉をした非常に上品で独特な雰囲気を持つ菫です。家の近くでは普通に見られますがそれ以外には見たことがありません。

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・サクラスミレ V. hirtipes
 大型で豪華な感じの花を見せてくれます。完全に開花すると花が上を向いてしまうのでちょっと撮りにくくなります。写真のように葉の中心付近に赤い斑が入ったものをチシオサクラスミレというようです。

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・シハイスミレ V. violacea
 主に西日本に分布するようです。同じ場所でも葉や花に変化が多く見ていて楽しい菫です。和名のシハイは葉の裏側(背側)が紫になることから来ていますが、緑のものもあります。

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・シロスミレ V. patrinii
 高原の菫という印象です。6月初旬、まだ高原の草むらが緑になっていない時期にスッと立ち上がって咲く白い花はとても凛々しく見えます。

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・スミレ V. mandshurica
 スミレという名前の菫です。今回、漢字で"菫"と書いているときはViola属の菫全般を指しています。どこにでもあるような気がしていましたが探して見ると意外と少ないように思います。

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タチツボスミレ V. grypoceras
 自分の行動範囲では一番どこにでもある菫という認識ですが、そういえば街中には咲いてないかな。そして一番苦手な菫です。数が多いだけに変異も多くて未だよく判りません。そろそろ真面目に勉強しようと思っています。手前の花は薄い桃色、奥の花が通常の色です。

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・ニオイタチツボスミレ V. obtusa
 タチツボスミレと良く似ています。花弁が丸く色が濃いので中心の白い部分との境界がはっきりして見えます。

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・ニョイスミレ V. verecunda
 以前はツボスミレと言われていたそうなので、ツボスミレと言うと古くから菫をやっているように見えるかも。湿り気の多い場所でよく見かけます。うちの庭でも湿ったところに自生しています。

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・ヒカゲスミレ V. yezoensis
 これも少し湿った場所にあるようです。そして名前の通り日陰でよく見かけます。

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 葉が黒いものをハグロスミレと呼ぶようですがそこまで黒いのは見たことがありません。これは多少黒っぽくなったもの。

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・ヒゴスミレ V. chaerophylloides
var. sieboldiana
 エイザンスミレと同じく葉が細く分裂しているので一番初めに見分けられるようになった菫です。エイザンスミレは3つに、このヒゴスミレは5つに分裂しています。エイザンスミレの葉より更に細くなります。うちの庭では一番蔓延っていますが、野外ではエイザンスミレほど見かけません。

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・ヒナスミレ V. tokubuchiana
var. takedana
 フジスミレの変種ですが、こちらの方がはるかに分布は広いようです。花はなんとも綺麗なピンク色で、フリルの縁取りになっているとても可愛らしい菫です。葉とのバランスも良くて菫のプリンセスと言われるのも納得です。日陰でよく見かけますが日当たりの悪いところは花を着けていない株が多いちょっと意地悪な菫です。

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・ヒメスミレサイシン V. yazawana
 日本ではフォッサマグナ周辺の亜高山帯だけで見られる貴重な菫です。まだ谷間に雪が残るような亜高山帯の春に咲くとても清楚で可憐な菫です。幸いなことに家の近くで咲いてくれるので毎年見ることが出来ています。

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・フモトスミレ V. sieboldi
 葉に斑が入ったものをよく見かけます。花弁がよれて花型の崩れるものもありますが、きちんと咲いた株はとても上品で大好きな菫です。今年は綺麗に咲いた花が撮れていません。葉の裏側はシハイスミレのように紫になるものが多いようです。

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・マルバスミレ V. keiskei
 林道沿いの日向に咲いているのをよく見かけます。白くて丸い大きな花を咲かせます。

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・ミヤマスミレ V. selkirkii
 とても鮮やかな花で咲いていると良く目立ちます。花もきちんと咲いて葉とのバランスも良い見事な菫だと思います。標高の高い少し湿った場所で良く見かけます。

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 スミレは自生地で複数の種類が咲いていると自然交雑種ができます。たださえ難しい菫の同定をより難しくしている原因でもありますが、スミレの楽しみを大きく広げてくれることも確かです。以下は今年見ることの出来た自然交雑種です。

・アルガスミレ V.mandshurica × V. hirtipes
 スミレとサクラスミレの自然交雑種です。どちらも大型で美しい菫ですが、アルガスミレは更に両親の良いとこどりをしたハイブリッドだと思います。名前のアルガは地名の有賀から。

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・キリガミネスミレ V.mandshurica × V.patrinii
 スミレとシロスミレの自然交雑種です。名前の通り霧ヶ峰を代表する見事なハイブリッドだと思います。見るたびに嬉しくなる菫です。

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・コワシミズスミレ V.patrinii × V. hirtipes
 シロスミレとサクラスミレの自然交雑種です。どちらも綺麗な菫ですが、コワシミズスミレは花弁が少しよれるところが本当に惜しいなぁと思います。名前は霧ヶ峰の強清水から。かなり白いものや白とピンクに染め分けたようなものもあります。

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 上と同じ花を横から見たところです。花弁の裏側はしっかりサクラスミレの色が出ています。

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 コワシミズスミレとサクラスミレが混じって咲いているところ。

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・マルバヒナスミレ V. keiskei × V. tokubuchiana var. takedana
 マルバスミレとヒナスミレの自然交雑種です。ヒナスミレの葉と花弁を丸くした感じのハイブリッドです。

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・オクタマスミレ V. tokubuchiana var. takedana × V. eizanensis
 ヒナスミレとエイザンスミレの自然交雑種です。今年は何か所かで見つけましたが残念ながらいずれも花を見ることが出来ませんでした。

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